ふとんから出たくない

22歳、大学生、休学中。半引きこもり生活をしています。生きるのが怖い。

心霊現象

 

 ここ数ヶ月ほど、我が家で奇妙な出来事が頻発している。きちんと戸締りをしたはずの二階の窓が開いていたり、一人暮らしをしていて家にいないはずの弟の部屋から物音が聞こえたり、母と夕食の準備をしていると、何もしないのにリビングのドアが音を立てて開いたり。はじめは気のせいかと思っていたけれど、こうも続くと本当に何かいるのではないかと疑ってしまう。幽霊の類ならまだしも、屋根裏の散歩者的な変態が潜んでいる可能性もあるので気が抜けない。私の家族は皆就寝時間が早く、深夜をまわる頃には寝静まるので、天井裏で生活しようと思えばできなくもないだろう。などと考えて、非現実な妄想に慄いたり、けれどちょっぴりワクワクしたりなどしていた。

 そして今日、新たな心霊現象が確認された。発見者は父だ。いわく、誰も触っていないのにウォシュレットの水圧が「強」になっていた、というのである。これは大問題だ。下手すると尻穴の危機である。いくら嫌がらせにしたって趣味が悪いではないか。

 我が家でウォシュレットを使うのは父のみ、その父が設定を変更していないということは、誰か家族以外の人物が介入していなければならない。しかしここ最近、我が家に来客はなかった。さらに昼間は引きこもっている私がいるので、外からの侵入者があれば気がつくはずである。

 とすると。いや。まさか。もしかして。

 やはり霊が住み着いている──?

 なんということだろう。我が家の霊はウォシュレットを使うおっさん(推定)だったのだ。しかもたぶん、痔を患っている。

 まだ死装束の女とか、血だらけの子どもの霊とかだったら恐怖心も呼び起こされそうなものを、痔持ちのおっさんでは憎むにも憎めない。むしろ死んでなお痔に苦しむ霊とあっては、憐憫の情さえ湧いてくる始末である。

 なあ、おっさんよ。そう悲観するなよ。黄泉の国に行く前に、その痔、きっと神様が治してくれるさ。だからさっさと成仏してくれよな。